金沢大学 保健学専攻融合Activity拠点

はじめに

 健康に生活することは誰もが願うことである。しかし、われわれを取り巻く環境、生活習慣、職場や家庭でのストレスは健康にとって危険な要素を含んでいる。 健康に生活するためにはこれらの危険な要素を知り、その対処法を知らねばならない。健康に生きたいと願うだけでは健康な生活を手に入れることは出来ないのである。身体の仕組みや働き、病気の原因や成り立ちを知ることは健康に生きるための第一歩である。現代社会にあふれている健康に関する情報を適切に取捨選択する能力も必要である。また、自分の健康状態を常に記録しておき、いつでもどこでも利用できる環境も必要である。

 近年、健康科学に関する技術の進歩や知見の集積は進んでおり、これらを的確に活用する指導・支援システムや人材が求められている。大学は「健康に生きたい」という国民の期待に緊急に応える必要がある。

 しかしながら、疾病の予防を超えて健康を科学的に定義・検証し、これに基づいて健康の維持・増進を図る方法論(Evidence Based Wellness:EBW)はいまだ確立されていない。健康の維持・増進の指針は、世代や身体状況により多様である。たとえば、高齢者やすでに疾病・障害を有する人々には健康回復の取り組みを提案指導し、40 歳未満の若年者、「特定健診・保健指導」非該当者などにおいては、健康な状態を維持増進する方法の提供など、EBW に基づいた指針の提供が必要である。

 現代の多くの国民は自らの健康について何らかの不安と問題を抱えており、自らの状況に応じた健康増進行動を家庭・地域全体で支援していくことが重要である。住民自らが主体となって健康に関する知識を深め、健康増進活動を推進していく目的で「石引よろず保健室」を開設し、地域住民の健康に関する啓発活動も行ってきた。

 当センターでは、疾病の予防を超えた、健康を増進する新しい学問を確立し、その教育研究の拠点を形成することにより、国民の健康行動を支援する健康指標の提供、健康増進技術の発信、人材の育成を行い、もって国民の健康寿命の延伸に寄与することを目的とし活動してきた。未だその道半ばの感は強いが、3 年間の活動をまとめ、次のステップへの踏み台とする目的で本小冊子を作成した。ご覧頂いてご批判とご助言をお願いする次第である。

健康増進科学センター
センター長 大竹 茂樹

ページのTOPへ